2011年8月28日日曜日

森のムッレ教室 1

以前このブログで紹介した「森の幼稚園」。
正しくは「森のムッレ教室」という。
ムッレ教室のロゴマーク(森の妖精ムッレの絵)

森へ向かうムッレ教室の子たち。

私はスウェーデンで森のムッレの幼稚園を見学に行ったりリーダー養成講座を受けて来て、森のムッレ教室の教育プログラムがいかに優れているかを実感した。
そして帰国し、幼稚園保育園や住宅地など子供の環境や、室内遊びやお勉強中心の園の教育方針を目にして愕然とした。子供にとってこれで本当に良いのだろうか…と。
今の日本にこそ森のムッレ教室を伝えたい。そう思うようになって来た。
そこで、一度きちんと森のムッレ教室について書いておこうと思う。

(森のムッレ教室は15年前に日本にも取り入れられ、今や日本各地に広がっておりどこも精力的に活動されているようです。今回はスウェーデンでの教室を中心に書きますが、基本的なプログラムは日本でも同じです。)


ムッレ教室は5−6歳児を対象とし、五感を使って様々な生き物と触れ合うことで自然感覚を身につけて生き物は互いに依存しているというエコロジーの基本を学び、また、架空の森の妖精「ムッレ」が登場して子供たちに自然を大切にすることを教えるプログラムとなっている。こうしたエコロジーや自然を大切にする事を学ぶ事に遊びや歌が上手く組み込まれ、楽しさと学びに溢れている

ムッレ教室の他には、1−2歳児用のクノッペン教室、3−4歳児用のクニュータナ教室、小学校低学年用のストローバレ教室、小学校高学年用のフリールフサレ教室がある。
これらの教室は保育園幼稚園の活動に組み込まれたり、ボランティアのリーダーによって週末に開かれている。
(5−6歳児用のムッレ教室から、1−2歳児用のクノッペン教室、3−4歳児用のクニュータナ教室、小学校低学年用のストローバレ教室、小学校高学年用のフリールフサレ教室まで全てをまとめて用いられている活動名がないため、今後このブログ上では全教室をまとめたものを「森のムッレ教室」とし、5−6歳児用の教室のことを「ムッレ教室」とします。)

スウェーデンで森のムッレ教室が始まってから50年が経ち200万人以上の子供が参加して来ており、220以上の幼稚園で森のムッレ教室が取り入れられている。
ストックホルムでは、こうした幼稚園に入るのに100人待ちもあるそうだ。
(日本でも、参加している子供は1,500人程で、資格を持つリーダーは約200人と年々増え続けている。)


自然遊びや環境教育を行っている団体は日本にもたくさんある。
けれども、その多くは、“感性を育む”事に留まっていたり、“環境に良い事をする”方法論に終わってしまっている。
一方、森のムッレ教室の優れた点は、
1)自然を深く理解する事
2)自然への知識が織り込まれた歌や遊びが用いられる事
3)子供たち一人ひとりどが自分の考えを持ち意見を述べる事を大切にしている事
4)最終的には、自然への理解としっかりした考えを元に社会へ行動を起こして行くことを目指している事
だ。


まずは森のムッレ教室がどんな風に進んでいくか見てみよう。
(次へ続く。)


参照:
森のムッレ教室HP日本 本部)/(東京支部)/(新潟支部)/(Sweden)
HPを見る事が出来るのは以上の4つです。東京支部と新潟支部のHPには写真や活動が豊富に載せられています。
これらの場所以外でも日本中に森のムッレ教室のリーダーがおり、幼稚園保育園やボランティアで教室が開かれています。興味のある方は本部や上記の支部に連絡を取ってみて下さい。

森のムッレ教室についての本
ムッレ教室の哲学や理論に加え日本での活動が紹介された深い内容となっていて、本当におすすめの本です。特に、子供や自然、環境づくりに関わる方には是非読んでもらいたいです。

2011年8月8日月曜日

企業と地域住民の連携 3

〜「企業と地域住民との連携1, 2」の続き〜

今回のチーズ講習会が開催されたOstenshus(ウステンスフス:Cheeze house)は、建物の作りが市民に開かれているやVästerbottenOst(ヴェステルボッテンチーズ)と関わっている点でとても興味深い。

写真は正面から見たOstenshus。
正面には全面ガラスブロック、側面背面には北スウェーデンに伝統的な赤茶色に塗った木材が使われている。(参照:赤い家



Ostenshusは成人の教育活動を支援する機関Studieförbundet Vuxenskolan(スチュディエフォーブンデット ブクセンスーラン:Study association of Adult school)が所有している。

Ostenshusには、Studieförbundet Vuxenskolanの職員のオフィスに加え、カフェや地域産物売場、貸し会議室、バーテーブル付き貸部屋、VästerbottenOstの博物館、チーズ作り体験室が併設されている。
カフェではVästerbottenOstを用いた軽食や昼食が提供されている。スウェーデンでは会社の研修や会議を外部のレストランや貸し会議室を利用する事も多いため、Ostenshusのような美味しい料理が出る貸し会議室は重宝がられるだろう。
2階からは渡り廊下を経てVästerbottenOstの工場へつながっていて、チーズの生産工程を見学することが出来る。
加えて、VästerbottenOstが工場のマネージャー室と工場職員の着替え室用に部屋を借りている。



一階玄関を入ってすぐにカフェ地域産物売場がある。
カフェでは編み物などの市民サークルや講座が開かれる

写真はカフェでのチーズ講習会の始まりの光景。


カフェの奥にはVästerbottenOstミュージアムがある。
ミュージアムの奥には舞台があり、コンサートやシアターとして市民に開かれている

写真手前がミュージアムでヴェステルボッテンチーズに関する展示があり、奥には舞台がある。ミュージアムの上部にせり出した半円型のものはStudieförbundet Vuxenskolanのオフィス。

ミュージアムは2階まで吹き抜けで、2階部分にはStudieförbundet Vuxenskolanのオフィスがせり出す形になっている。
このオフィスには壁が設けられておらず胸の高さ程の柵が付いているだけのため、ミュージアムから職員の働く様子がいつでも市民の目に触れるようになっている。
ミュージアムから階段を上がって工場の見学室に行く時にはこのオフィスを通り過ぎるようになっていて、ここでも仕事の様子を目に出来る。

写真は、工場の見学室に行く階段から見たStudieförbundet Vuxenskolanのオフィス。


地下にはチーズ作り体験室貸し会議室バーテーブル付き貸部屋がある。
貸し会議室からは庭に出る事ができる。会議の合間にデッキへ出て庭を眺めて一休憩、とは気が利いている。

写真は上からチーズ作り体験室、貸し会議室、バーテーブル付き貸部屋。






このように、地域産業であるチーズ工場を活かす機能と市民の活動を支える機能を両立させていて、それが建物の作りにも工夫されているOstenshusの在り方は、とても興味深い。