2012年1月27日金曜日

森のムッレ幼稚園の園庭 5 自然教育に特徴的なもの


〜「森のムッレ幼稚園の園庭 12 ,3, 4」の続き〜
(森のムッレ教室についてはこちら→123456


森のムッレ幼稚園の園庭には、これまで紹介して来た場所以外に、自然教育にとって大切な場所が設けられている。

集う場”は、その自然教育にとって大切な場所のひとつだ。
ここは、昼食やおやつの時間に使われるほか、サムリング(集会)といってスウェーデンの幼稚園では一般的な皆で歌ったりお話をする時間に用いられる。
そして、ムッレ幼稚園ではディスカッションを重視しているため、一般の幼稚園以上に”集う場”が園庭に設けられている。(ディスカッションを重視する理由 参照:ムッレ教室の自然の階段
”集う場”は皆で囲って座れるように円形や四角で設けられていることが多い


次に、菜園がある。
菜園では、一年を通して植物を育てる事や植物の変化、食を学ぶ。
植物は冬の間室内で育て、暖かくなってくると菜園に植える。
もちろん、収穫した野菜は昼食やおやつの時間に食べる。


菜園の一角には、ちょっとした休憩スペース。
こういったスペースが加わるだけで、菜園が ”野菜を育てる場所” としてだけでなく、”楽しみのある空間” になる
(菜園を「自然を楽しむ場所」と捉え、菜園内に休憩スペースを設けるのはスウェーデンで一般的です。参照:市民農園 12345

菜園には各月ごとの菜園での活動が写真で飾られており、自分たちで育てて来た喜びや植物の一年の変化を実感し易いよう工夫されている。




木に設けられた鳥の巣箱は、四季の中で動物を学ぶために森のムッレ幼稚園では多く設けられている。

加えて、ウートシクテン幼稚園では鶏小屋も設けられている。
鶏を飼うことを通して、”命と死”について考えていく
(森のムッレ幼稚園の中でも、鶏小屋を持つ園は多くありません。)

小屋は10×3㎡程もあり、広い。小屋内の土は柔らかく(踏み固められておらず)、小屋の周囲には木々が茂り、鶏はのびのびと暮らしている
こうした良い飼育環境から、鶏が人と同じ”いのち”として丁寧に扱われているのが分かる。

鶏の世話は、園に通う子の中で近所に住む子と親が交代で行っている
毎朝、子供たちが卵をもらいに行く


そして、コンポストがある。

スウェーデンの幼稚園には環境教育が多かれ少なかれ取り入れられており、その最たる取組みとして、ほとんどの幼稚園でコンポストが設置されている。コンポストには園から出る調理ゴミや食べ残しが入れられる。ただ、多くの一般の幼稚園では菜園を持たないため、園内での食物資源の循環は出来ておらず、業者に回収してもらっている

森のムッレ幼稚園では、多くの園で菜園を持っているため、園内で食物資源の循環が行われている
さらに、ウートシクテン幼稚園では鶏を飼っているため鶏糞を入れることが出来、より栄養価の高い土を作っていく事が出来る。

スウェーデンは乾燥しているため、写真のようなオープン型のコンポストも多く用いられている。(参照:枝で編んだコンポスト

写真は、コンポストから出来た堆肥を置いておく場所。
これらの堆肥づくりにも父兄が関わっている

スウェーデンでは両親とも働いている(または勉強中)家庭が多いため、週末に親たちが集まって堆肥づくりや園庭の遊具を作ったり改修をしている。
週末といえば、どの親も「子どもと何をして遊ぼうか」と困った経験があるだろう。
森のムッレ幼稚園のように、親と子どもらが週末に集まって遊びながら園庭を良くしていくことは、週末の過ごし方として有意義かつ楽しいように思う。


コンポストに加え、リサイクルにも積極的に取組んでいる。
園庭に置かれたリサイクル用ゴミ箱は、瓶(色付き/透明)・磁器・金属・プラスチック袋など細かく分けられ、子供たちが分別し易いようにゴミ箱ごとに絵付きで表示されている。


最後に、工作小屋がある。

森のムッレ教育は、自然の仕組みや人が自然に与える影響を理解し、最終的には「行動して社会に貢献する」ことを目指す。(参照:森のムッレ教室の自然の階段
環境や社会を作ってゆく行動の第一歩として、自分で体と頭を動かして自分の周りの物を作っていく事は大きな意味がある。

「自分はどんな物や環境が欲しいのか?より良い形(在り方)はどのようか?作った物によってどんな結果がもたらされたのか?」
物を作る事は、シンプルな行動だけれど、その中から得られる事はとても大きい

そして、
自分の力で作った物が自分の周りを変える自分の周りをより良くしていく事が出来る。」
この感覚を体感していく事は、作った物がどんなに簡単で小さな物であっても、より良い社会や環境を作っていく上でとても大切な事だと思う

写真は、園庭にある工作小屋。

のこぎりや金づちも、先生の許可を得て自由に使うことが出来る。

子供たちが釘うちの練習をした、園庭内の丸太。

2012年1月6日金曜日

森のムッレ幼稚園の園庭 4 居場所

〜「森のムッレ幼稚園の園庭 12 ,3」の続き〜
(森のムッレ教室についてはこちら→12345, 6



森のムッレ幼稚園では居場所としての環境も考慮されている。

子供に限らず人は、少し隠れられるような場所や小規模な空間を心地良く思う
ストックホルム郊外にあるウーシクテン幼稚園では、地形による凹んだ場所を活かしたりり、植物によって囲まれた小規模な空間が設けられている

園庭の縁の凹んだ場所は、草花が生え園外の景色も見れる居心地の良い小空間。

茂みに囲まれた場所は、わくわくする秘密の隠れ家。
奥に入って行きたくなる。

木や石をこんな風に配置するだけで、ちょっとした基地のようだ。


その他にも、園庭中に心地良い居場所が設けられている

切り株で作った、素朴で温かなベンチ。
こんな場所で友達と話をしたり先生に本を読んでもらうと、心にいつまでも残りそうだ。


昼食もお絵描きや工作も園庭で行う。
一般の幼稚園ではお絵描きや工作などは室内で行うが、ムッレ幼稚園では園庭で行う。森に遊びに行く日には森で絵を描くこともある。(参照:森でのお絵描き
ムッレ幼稚園では基本的に一日を屋外で過ごすが、雨の日には室内で遊べるよう室内環境も整っている。(ムッレ幼稚園の室内環境は自然素材を活かした素敵なものです。ブログ記事で取り上げる予定は今のところありませんが、ご興味のある方がいらっしゃれば記事にするのでコメントを頂ければと思います。)



続いて、これは何の小屋でしょう?

実はこの小屋はお昼寝用。
一般的にスウェーデンでは室内のお昼寝用の部屋で寝たり、園庭にベビーカーを並べてお昼寝をする。(参照:ベビーカーでのお昼寝お昼寝の部屋
この小屋はスウェーデンの伝統的な小屋の作りで、アカマツで組まれ隙間は地被類で埋められている。伝統的な建物がお昼寝小屋として用いられ、子供たちが親しめるのは素敵な事だと思う。(参照:伝統的な風よけ小屋

小屋の手前に焚火場が設けられているのも、風よけ小屋の典型的な形。
園庭では、焚火をしながら集ったり、小屋を舞台に手前の丸太ベンチを観客席にすることも出来るだろう。
ウートシクテン幼稚園では、保護者会もここで行う。




園庭の空いた場所には自然と生えて来た野草が残され、季節感とその土地らしさを与えている。

2012年が始まりました

いつもこのブログを見に来て下さり、本当にありがとうございます。
私は週に一度訪問者数を確認するのですが、少しでも来て下さっている事を知るととても励まされます。良い環境づくりに向けて想いはきっと伝わると希望を持つ事ができます。


さて、2012年が始まりました。

昨年、特に帰国後の半年は大忙しでした。
幼稚園に仕事に日々の買い物…。スウェーデンにいた時とやっている事柄は変わらないのに、内容的にする事が多くてびっくりしています。
と同時に、体に馴染んだ四季や違和感のない人とのやりとりに日々幸せを感じています。風が頬をなでるだけで子供の頃からの様々な記憶につながって体中が喜び、これが自分が生まれ育った場所というものなんだなと母国の良さを実感しています。

今年は、庭師としての知識と技術をしっかりと磨きながら、子供と一緒に考え作る庭づくりや園庭校庭づくりに取組んで行こうと思います。
ブログもこれまではスウェーデン一色でしたが、日本での事も入れていきたいです。

それでは、今年もどうぞよろしくお願いいたします。