2012年5月30日水曜日

土の再生 3 土と肥料

~土の再生 1, 2 の続き~


堆肥というのは、有機物を微生物の力で完全に分解した肥料のこと。
堆肥と土壌と混ぜることで、それらを食べるミミズや微生物・菌類が活性化し、その結果 病害虫菌の発生を抑制することができる。


その他 堆肥の長所としては、
・堆肥中の腐植質が土壌粒子を接着して団粒構造を作り、植物の生育に良い“水持ちが良くて水はけが良い”土壌にする。
また、空気が通りやすく養分が保持されやすい土壌となる。
・土壌中のアンモニアやカルシウム・カリウムなどの陽イオンを保持する力を高め、肥料持ちを良くする
・堆肥中には様々な物質が含まれるため、化学的変化に対しての緩衝機能を持ち、安定した土壌を作ることが出来る。


難点としては、
・有機物の分解が不完全な場合、土壌中の窒素飢餓や酸素障害を引き起こす可能性がある。
・施肥したての頃は 匂いが気になる。
がある。

腐植質によって作られる団粒構造。




前記事に書いた "牛ふんや豚ぷん・公園や街路樹の剪定くず・卸市場生ゴミ・給食生ゴミから作った堆肥"は、植物の生育にとって重要な3大要素であるリン酸と窒素・カリウムをバランスよく含み、土を柔らかくし空気の通りも良くする効果がある。

この堆肥に加え、今回花畑化する土地では 以下の肥料も入れた。
・落ち葉が堆積し発酵した腐葉土/木の葉や枝を堆肥化したバーク堆肥:保水かつ排水性が良く、通気性や保肥性が良い。
鶏フン:植物の生育にとって重要な3大要素のうちのリン酸と窒素(もうひとつはカリウム)を多く含む。
油かす(今回は菜種油の搾りカス):窒素を多く含む。

こういった動物や植物など自然界のものを材料にして作られた有機肥料は、効き目はジワジワゆっくりとだが、長期にわたり健康な土を作ることができる


土の中では地表と同じように たくさんの生き物が暮らしており、それらが関係し合って土壌環境が成り立っている。
土が健康であれば、土壌中に暮らす生き物も活性化し、結果として植物が生育しやすい環境となる。


2012年5月26日土曜日

土の再生 2 施肥と耕耘

~土の再生 1 の続き~


天地返しが終わったら、次は堆肥やその他の肥料を撒く

今回は、牛ふんや豚ぷん・公園や街路樹の剪定くず・卸市場生ゴミ・給食生ゴミから作った堆肥を入れた。

近年の大規模農業化に伴って家畜ふん量が増大し、従来の方法では堆肥化が間に合わないという問題が起きている。
また、野積みにされた家畜ふんによって地下水が汚染される恐れもある。
そこで自治体などで、堆肥化施設を建設し剪定くずや給食生ゴミと混ぜて堆肥化を行う動きが出て来ている。

畜産家の方々は家畜ふんを回収してくれる経路が出来た事で、ふん処理の手間が軽減されて飼育に専念しやすくなっているそうだ。
また、給食ゴミがリサイクルされ地域で循環しているという事実は、子供たちにとっても食や地球環境への関心につながるだろう。


写真は、堆肥がダンプカーで運ばれてきたところ。
この7kgの堆肥は、敷地全体へ一輪車で運び、土と合わせてならして行く。




堆肥を敷地全体に撒いた後は、耕耘機で土と堆肥を混ぜる。

2012年5月8日火曜日

土の再生 1 土の天地返し

私が見習いをしている "ガーデン工房 ふりーふ" では今、資材置き場として業者が使っていた土地を花畑へと変えている。
敷地面積は約1200㎡。

資材置き場、そしてその前にはトラック置き場として、20年以上もの間踏み固められてきたため、地面の土はスコップも入らないくらい固くなっていた。
そして、表面には砂利が敷き詰められていた。


この表層の固い土とその下にある柔らかな土を、ユンボ(油圧ショベル)を用いて天地返しをする。

砂利の混じった表層の固い土を横によけておき、その下の柔らかな層を掘り出す。
そして、掘り起こした穴に よけておいた固い土を入れ、その上に柔らかな土を乗せる。


写真の右側の土が、砂利の敷き詰められた元の地面。
左側がユンボ(油圧ショベル)で天地返しをした場所。

この土地は粘土質の部分も多くて水はけが良くなかった。
そこで水はけをよくするために、敷地の所々に深さ5m程の溝を掘り、そこに砂利や石を中心に入れていく
こうすることで、土壌中にたまった水が、空隙の多いこの溝部分を通ってさらに地下に流れていく

写真左側 ユンボで掘っている溝が、水を地下に流すための水路となる。



天地返し終了。
植物が育ちやすい柔らかな土が出てきた。


(つづく)

小さな園庭でも 2 敷地の用い方

〜「小さな園庭でも 1」の続き〜

ストックホルム郊外にあるVattendroppen(バッテン ドロッペン)野外保育園(以下、V 野外保育園)は、敷地面積600㎡弱の比較的小さな園だが、建物を敷地中央に配置してその周囲に菜園や集う場所・遊び場を設ける事で、子供たちに様々な活動を提供している。


門から入ってすぐの所には花壇があり、来園者を迎える。(図面下)
木もベリーの低木も草花も一緒に植えられていて、足下から目の高さまで様々に彩っている。
園庭の花壇はどれも子供たちと先生が一緒に植える

花壇は入口近く以外にも園庭の所々に設けられており、ベリーなどの食べられる植物も植えられている。
ベリーを園庭に植えるのはスウェーデンでは一般的で、実がなる時期には園庭中で口の周りを赤や紫にした子供たちが見られる。


建物南側には、門・花壇・砂場・テーブル・道具小屋がある。

門を入ってすぐの遊び場は、砂場
下の写真で 砂場の奥に見えるのは、子供たち一人ひとりのリュックサック。野外保育園では一日の大半を屋外で過ごすため、鞄も外に掛けておく。朝登園してここにさっと鞄を掛けたら、すぐに遊びに入って行ける。


砂場と建物の間には、屋根付きテーブル
その奥には、菜園。
テーブルでは、絵を描いたり本を読んだり、菜園や花壇のための仕事をしたり…。
昼食やおやつ時にもこのテーブルを使う。


子供たちが描いた絵は、こんな風に建物の壁に飾られる。



建物西側には、壁に沿って菜園が設けられている。(図面左)
ここでは、細長い菜園を設けて、細長い敷地を有効活用している。
菜園には散水スプリンクラーも付いている。

菜園は建物のすぐ傍にあり 前庭と後ろ庭をつなぐ位置にあるから、菜園の活動がとても身近なものになっている。
先生が菜園仕事をしていると、遊んでいた子たちも駆け寄って来て一緒に手入れを始める。


建物東側には食べ物屑を処理するコンポストや雨樋からの水を利用するための雨水タンクが置かれている。(図面右)
こうして得られる堆肥や水は、菜園や花壇に用いられる。



建物北側は、広めの遊び場となっている。(図面上)

丸太で仕切られた球技用のスペース。
園児の年齢ならゴールもこれくらいの大きさでも十分なようだ。

球技用スペースとは言っても多目的に使え、子供たちは、ゴロゴロッと置かれたタイヤを遊具にしたり、仕切りの丸太の出っ張りを利用して板と合わせてシーソーを作って遊んでいる。

円形の踏み石を並べて、ケンケンパをして遊ぶ姿も。

こんなにもシンプルな物や形が、子供たちの創造力を育む素晴らしい遊具になっている。

私はこれまで様々な園庭校庭を見学して来たが、木材や石・煉瓦など扱いやすくてシンプルな素材で子供が自由に使って遊べるようにしている園や学校では、子供が工夫して遊具を生み出していく姿を頻繁に見かけた。

球技スペースからさらに北側は斜面になっていて、冬にはソリやスキーをして遊ぶ。
こうした地形の凹凸が遊び場をより面白くしている


素朴な車やボートの遊具。
子供たちはきっと格好良い車や大航海船を思い浮かべながら遊んでいるんだろう。
(参照:森のムッレ幼稚園の園庭 2 遊具


こんな風に小さなテントも園庭中の所々に置かれている。
自分の幼少時代を思い出しても、小さな囲われた場所が好きだった。


建物南東側には集う場がある。(図面右下)
小屋と丸太が円形に並べられ、皆で輪になって座れるようになっている。

野外保育園では昼食もおやつも屋外で食べる。
この集う場も食事に使われる。

集う場の中央に、食事が並べられ、スウェーデンでは一般的なビュッフェ形式でふるまわれる。
用意された食事の中から、子供たちは自分で食べる物を選び 食べられる量を決めて取って行く。
先生は料理の前に座り、料理を取って行く子供たちを見守っている。
「何食べるの?」「チーズは要る?」…この配膳台の周りでは先生や友達との会話がたくさん生まれる。

園庭内での食べる場所はグループごとにおおまかに決まっているが、グループの中でも座る場所は自分で選ぶ。
ある子は陽の当たる岩の上を選び ある子は丸太のベンチを という風に、自分の好きな場所を見付ける。
今話をしたい子の隣に座って、友達との会話も弾む。

ある程度まとまりを持った中の、この自由度
とても自然体で、子供たちの意志も働き、良いなと思う。


年齢の小さな子はお昼寝も この集う場の小屋でする。
日差しや小屋の中の暗さ・頬を撫でる風・木の葉の音や鳥のさえずり…それらに感覚や感情を心地良く刺激されながら眠りに入る
なんて気持ちが良さそうなんだろう。

***

小さな園庭 1, 2で見て来たように、
子供たちが体と頭と心をめいっぱい働かせて遊んで学べる園庭は、敷地の大きさ次第ではない。
小さな敷地であっても、土地の使い方次第なのだ。


日本でも、楽しい園庭がもっともっと増えるといいな。